この照らす日月の下は……
22
カナードからのメールを読み終わったところでミナがため息をつく。
「姉上?」
「先に動いていて良かった。危なくあの子をプラントに行かせるところだった」
この言葉にその場にいた全員が顔をしかめる。
「それにしても、あの子に執着をしていたのがザラの息子だったとは……」
たまたま同姓なだけだと思っていたのだが、とミナは続けた。
「希望的観測はするものではないな」
こうなるとわかっていればもっと早く動いたものを、と彼女はつぶやく。
「まぁ、いい。こちらにいる間にキラにはしかと言っておけば良い」
プラントについてはラウに情報を集めさせればいいだろう。
「ともかく、キラが過ごす部屋を用意しなければ」
意識を切り替えるようにそうつぶやく。
「ここならば本来の姿でもかまうまい」
自分には似合わないが、キラであればふわふわの服もよく似合うであろう。ミナはそう言って笑った。
「確かに。あれの好きなぬいぐるみも用意しておくか」
ここにいる者達は皆、口が堅い。だから、ここならばキラがかわいらしい格好をしていても喜ばれるだけだ。逆にエスカレートするかもしれないが。
「しかし、一人で大丈夫かの。誰かと同室にしておいた方が良いのではないか?」
カリダ達は来ないのだろう、とギナが問いかけてくる。
「たまには、二人だけの時間も必要だろう」
ここしばらく手間をかけてしまったから、とミナは言い返す。
「今もカナードの面倒を見てもらっておるしな」
あれのことだから馬鹿はやっていないと思うが、とギナもうなずく。
「キラがそばにおるからの」
一人であればどうだったか、とため息をついた。こちらでのあれこれを思い出せばそれも当然ではないか。
「カナードだからの」
「そういうことだな」
キラの前では格好をつけたいらしい、と二人は笑う。
「とりあえず、キラはラウと同じ部屋にしておくか。あれは今私物が少ないからな」
「いやがりそうだな」
「それはそれでかま湾わんだろう」
からかうネタになる、とミナは口にした。
「万が一の時には本人確認に使えるだろうしの」
下手をすれば連絡が取れない可能性もあり得るのだ。保険はかけておくべきだろう。
「そう言う使い方もあるのか」
ふむ、とギナがうなずく。
「では、ムウの方も準備しておくべきだの」
彼はいずれ大西洋連合へと行くことが決まっている。だから、と彼は続けた。
「それが良かろう」
他にも色々と準備をしておくべきだな、とミナは言う。
「まぁ、一番すべきことはキラを愛でることだが」
他のことはすべて後回しにしても、と彼女は言い切る。
「姉上……」
「何よりも重要であろう? ご両親の同行なしにキラがここに来るのは初めてなのだぞ?」
「だからといって、甘やかしすぎれば二度目がなくなるかと」
ギナがそう反論してきた。
「だから、ムウがおる」
そのあたりの事は彼に任せておけばいい。そういえばギナも納得したようだ。
「なるほどな。適材適所か」
少し違うような気もするが、これ以上説明時に缶をとりたくはない。それよりもさっさと準備と根回しを行った方がいいのではないか。ミナはそう判断をしただけだ。
「そういうことだ」
忙しくなるな、とつぶやいた彼女の言葉を正確に理解できるものはどれだけいるだろう。だが、ギナは適当に動くはずだ。それで十分、と考えていた。